巡り合わせ

現役での大学受験に失敗。

地元には予備校が少なく、大手予備校がある地方都市での寮生活を決めた。

 

ひたすら勉強する環境を整えてくれた両親に感謝しかありません。

 

寮生活のある日、母親が来てくれることに。

初めて親元を離れた自分にとって楽しみな予定。当日、何時ころ来るのかなぁと自分の部屋の窓からふと外を見ると、寮の前にある小さな公園のベンチに母親が座っていた。

 

寮の方を見上げながら座っている。

その後、食事などしながら、なぜ近くに来ていたのに連絡をくれなかったのか聞いたような気もするが、ハッキリと覚えていない。

 

あれから21年。

 

電動自転車のチャイルドシートに娘を乗せて、その公園を通る。ふと自転車を停め、寮を見上げた。

 

勉強する環境を整えてもらっているのに感謝していても、それなりに苦しかった浪人生活も思い出した。人気講師の講義を受けるため、下敷きを置いて席どりをしたのも思い出した。

 

母親は寮を見ながら、とにかく応援していたんだろうなと思う。

時間より早く着いても連絡せずに、公園のベンチに座り、寮を見上げていた。

 

寮を見上げながら、そこで生活する息子を想っていたのでしょう。

 

チャイルドシートで寝ている娘の寝顔を見て、当時感じ得なかった子への想いを感じた。

 

ただ予備校があっただけで、地元でもないこの街に数ヶ月前に人事異動で越して来た。

 

それなりに変わっているが、この小さな公園から自転車にまたがり寮を見上げていること自体にも、巡り合わせはあるものなのかと思った。

 

母の日に限らず、母親に感謝してる。

仕事が落ち着いたら、娘を連れて実家に帰省しよう。